ひびき
登場人物は3人、そのうちセリフがあるのは1人だけというユニークなストーリーの進め方が印象的な本作。コロナ禍の都市部を舞台に、物言わぬ警備員との交流を描くのは、前作『WHOLE』(19)が国内外で高い評価を得た川添ビイラル監督。『波と共に』(16)、『WHOLE』と、日本で暮らすマイノリティたちに焦点を当てた作品を描いてきたが、一変本作では、市井の人々を描き、コミュニケーションとは、そしてどこにでもいる普通の人々の心の叫びとは何かを投げかけている。本作のプロデューサーでもあるローラン・イバネスは川添監督の作品に惹かれて『ひびき』の脚本を書き上げ、今回初めてタッグを組んだ。フランス人であるイバネスは、日本で働いていた時に、感情をあらわにしない日本人を新鮮に感じ、そのことを脚本のヒントにしたという。